ギャッベ(ギャベ)とは?手織り絨毯ギャッベの魅力と歴史


ギャッベとは、イラン南部のシラーズ周辺に暮らす遊牧民「カシュガイ族」の女性たちが織る毛足の長い手織り絨毯のことです。
羊の毛を手で刈り取り、手で紡ぎ、草木等の天然染料で染めた後、手で織られて完成します。

ギャッベは、世界に1枚しかない絨毯です。その時の気持ちや風景を糸に込めるように織っていくので、同じ人が何枚織っても同じデザインにはなりません。
織り子さんの自由な感性と家族への願いが込められており、生命の木と言われる灌木や山羊、羊などがいきいきと描かれています。

さらにギャッベは耐久性が高く、なんと3世代も使用できると言われています。
親から子、子から孫へと代々受け継がれ、使うほどにその味わいが増していきます。長年にわたり使用することで

‟ものを大切にする”

という価値観を子供たちに伝えることができます。


現代の生活に適したインテリアとして注目

 
ギャッベは世間的に有名なペルシャ絨毯と同じカテゴリーではありますが、ギャッベ独自の文様や色合いが多くの人々から愛されており、
現代のインテリアにもデザインがマッチしていると注目されています。

肌触りがよく、絨毯の上を歩くと手織り独特の弾力が感じられ、夏はさらっとしており、冬はほんわりと暖かく、年中快適に使用できます。
しっかりとした手紡ぎの糸を使用しているため、重い家具を置いてへこんでしまっても時間が経つと元に戻ります。

また、目がつまっているためホコリは絨毯の上にのっている状態になり、奥まで入り込まないので掃除機をかけるだけで清潔にお使いいただけます。
手仕事の温かみや作り手の個性、独自の表情を持つ世界に一つしかない絨毯で、私たちの生活を豊かにしてくれます。


ギャッベの文化的背景


イランの遊牧民「カシュガイ族」の生活必需品として深く根付いているギャッベ。
ザクロス山脈の厳しい自然環境での遊牧生活を生き抜くため、ギャッベという絨毯を作ったと言われています。

この地域では、遊牧民は家畜の飼育や絨毯織りを主な生業としており、家畜である羊の毛がギャッベの素材となっています。
羊の毛を手で紡いで糸を作り、自生する草木などを利用して天然の染料で染め、手で織る。このような手間のかかるプロセスを経て、ギャッベは誕生します。
紡がれてきた知恵の集積が、強度と美しさを持った絨毯を生み出し、家族間で代々受け継がれる宝物となっています。

テント生活が主である遊牧民たちは、ギャッベをテントの床に敷き、そのフカフカとした弾力性でゴツゴツした地面から身を守ります。
ギャッベは、遊牧民たちにとって快適な生活空間を作るための必要不可欠なアイテムであり、嫁入り道具としても使用されています。

このようにギャッベはカシュガイ族の生活や文化、そして自然との関わりの中で作り出された絨毯なのです。

 

ギャッベの歴史的背景


ギャッベは、カシュガイ族の長い歴史と共に、素朴ながらも洗練されたデザインへと進化してきました。

市場に登場したのは絨毯史では比較的新しく、20世紀後半となっています。
はじめはゴミと言われ全く評価されなかったギャッベですが、その魅力に取りつかれたヨーロッパの方が市場で紹介すると、
ギャッベの素朴なデザインや鮮やかな色彩が高く評価され、瞬く間にギャッベという名が知れ渡りました。

しかし近代化と共に、伝統的な手織りギャッベの製作は減少の一途を辿ることに…。
「根気のいる絨毯織りより街で働きたい。」という若者が増えて織り子さんの数が減少し、
伝統的な織り技術が途絶えることが危惧されるようになったのです。

ギャッベを織る遊牧民の手織り技術が評価され、後世に受け継がれるべき文化として、2010年にユネスコの無形文化遺産に登録されました。
遊牧民の生活や文化に根差した伝統的な製作技術やデザインは、現代のギャッベの魅力として引き継がれています。


ギャッベの素材(羊毛)


羊毛(ウール)は優れた天然素材として知られています。特にギャッベは、厳しい寒暖差のある遊牧生活に適応するため、調湿効果に優れたウールが使用されています。
日本においては、梅雨などの湿度が高い時期にも、ウールが湿気を吸収しつつ発散することで、一年を通して快適に使用できます。

さらにMr.Gabbehが使用している冬毛は、天然の油分であるラノリンが豊富に含まれており、これが汚れに強く、柔らかく艶があるのが特徴です。

またウールは丈夫で長持ちするだけでなく、静電気も発生しにくくホコリを吸い寄せにくいので、気軽にご使用いただけます。


ギャッベができるまで

1.毛刈り


遊牧民にとって生活に欠かせない羊。ギャッベの原料は、その羊から刈り取られた原毛です。
ギャッベを織るためにはまず、大自然の中で羊を育てることから始まり、育てた羊から毛刈りを行います。
 

2.紡ぎ


刈り取った羊毛は、手作業で紡いで、糸にします。糸紡ぎは、主にギャッベを織るのを引退した女性たちが、担っています。


3.染め


紡いだ糸は、集めて染色工場へ運ばれ、天然染料で染められます。


染められた毛糸はしっかりとすすぎ洗いと天日干しをした後、織子さんへ手渡されます。


- 染料 -


ギャッベ絨毯の色彩は自然の染料を用いており、独特の深みと温かみがあります。
主な素材や色の特徴について、解説していきます。



・西洋アカネの根:昔から染料として使用されてきたもので、深い赤色となります。
・コチニール:コチニールは昆虫の一種であり、鮮やかな赤色が特徴です。




・クルミの外皮:茶色だけでなくやわらかな赤みを帯びたキャメル色も、クルミの外皮で染められています。


薄茶



・ピスタチオや木の皮:柔らかい薄茶色を生み出すことで独特の雰囲気を醸し出します。




・ザクロの皮:鮮やかな黄色となります。




・ジャシールとインディゴ:イランで自生する植物のジャシールで薄い黄色に染めたのち、インディゴを掛け合わせて緑色となります。




・インディゴ:インディゴは昔から染料として利用されており、深い青色を表現してくれます。


4.織り

ギャッベの織り機は水平機と言われ、地面に直接置くタイプのものを使用します。
その織り機に2人で向かい合ってテンポよく経糸をはり、ようやく織りの作業が始まります。



織り方の工程は次の通りです。

①経糸の2本に色糸を絡ませ、手前に引っ張ってカットします。一般的にギャッベはトルコ結びで織られています。
②一列の色糸を結び終わったら、結んだパイル糸がほどけないように固定するために、緯糸を通します。
③次にシャーネという緯打具を使用して緯糸を強く叩き、締める作業を行います。結んだパイルと緯糸をしっかり締めて、列を揃えます。
④ハサミを使い、長さが不揃いのパイル糸を整えます。

上記①~④の工程を、絨毯が完成するまで繰り返します。
1畳くらいのサイズを織るのに、3か月ほどの時間がかかると言われます。


5.仕上げ

織りあがったギャッベは、仕上げの工程へ送られます。


はじめにギャッベの裏面をバーナーで焼いていきます。


無駄な毛をこすり落とした後、パイルの長さを均一にするためにシャーリングします。


次は、水洗いです。
何人もの男性の手によって鉄のクワのような道具で汚れをコスリ出し、大量の水で洗い流していきます。


その後、太陽の下で天日干しします。夏は1日、冬は約3日で乾きます。
最後に、房やエッジの手入れ、歪みの補正などを施して、ギャッベは、完成します。

6.日本へ


こうして長い時間と行程を経て、ギャッベは完成します。Mr.Gabbehでは、
目利きのバイヤーがイランを訪れ、商品の買い付けをしています。
ギャッベの質を1枚1枚しっかりと確認し、厳選したものだけが、日本へやってきます。

ギャッベのデザイン



ギャッベのデザインの多くには、遊牧民の願いなどが込められています。
主なデザインの特徴について、解説していきます。


羊・ヤギ



遊牧の生活において、羊やヤギが主な収入源であるため、財産を意味します。


生命の樹



健康や長寿、生命などの多くの意味を持つ強力なシンボルであり、
人々の生活と神聖さをつなぐものとして表現されています。


ザクロ



豊穣や子孫繁栄・子供の成長を願うデザインであり、ギャッベに頻繁に登場します。


ラクダ


かつて遊牧民の重要な移動手段であり、成功の証とも見なされていたため、成功を象徴するデザインです。


四角



遊牧生活において、生命の命綱となる水や井戸、そして幸せな未来への願いを表現するためのデザインです。


オオカミの足跡



魔よけのデザインです。羊やヤギを襲う恐ろしい存在であるオオカミの足跡を織り込むことで
「悪いものが家の中に入ってきませんように」という願いが込められています。




美しさや幸福を象徴し、神様からの使者としての役割も持っています。
特にクジャクは、美と王権の象徴として用いられます。


ジグザグ



水の流れやオアシスを示し、生活に欠かせない水への感謝の意味が込められています。

ギャッベのある暮らし



ギャッベ絨毯は、肌触りの良さとデザイン性の高さから多くのシーンで使用されます。
特に日本では、床に直接座る文化があるため、ギャッベの柔らかい風合いはとても快適です。

主なシーンについて説明していきます。

リビング



ソファ前にギャッベを置くことで、リビングスペースをより快適に、居心地の良い場所に変えられます。
特に日本の生活様式では直接絨毯の上に座ることが多いため、クッション性が高いことは重要です。
ギャッベの柔らかな肌触りは、快適な時間を提供してくれます。

ダイニング



ギャッベをダイニングテーブルの下に敷くことで、食事の際、足元が癒されます。
また食事中の雰囲気がより豊かになります。


玄関



玄関は家の顔とも言える場所です。ギャッベを玄関に置くことで、来客を温かく迎える雰囲気になります。


子供部屋



子供部屋にギャッベを敷くことで、遊ぶスペースや読書の際のリラックスした場所として利用できます。
またギャッベの柔らかさは、子供たちが遊んで転んでも、受け止めてくれます。

ベッドサイド



朝起きてベッドから降りるとき、夜寝る前にベッドに入るとき、裸足の足をギャッベが心地よく迎えてくれます。


廊下



冷たい廊下が心地よい空間に変わります。ギャッベを敷くことで快適な生活を送ることができます。